イラストレーター・LAMが自身の創作の原点である『BLEACH』のキャラクターを描き起こす新企画「SOUL ART SHOWCASE」。その第一弾の公開に先立ち、LAMが原作者・久保帯人の仕事場を訪ねた。対談の前編では、LAMに鮮烈な記憶を残した幼少期の『BLEACH』体験から、久保帯人のキャラクター造形の核、そして週刊連載の裏側まで伺っていく。
木の斬魄刀を作っていた中学時代
久保帯人(以下、久保)LAM今日はよろしくお願いします。
LAM改めましてLAMと申します。お会いできて光栄です。緊張しております。さっき入らせていただいてからずっと話したくて我慢してたので、やっと話せるなって。まずは貴重なご機会をいただいてありがとうございますという気持ちでいっぱいです。
久保いえいえ、とんでもない。
LAM子供の頃の自分に自慢してやりたいですね。「久保先生の仕事場にいるぞ!」って。入ってからもずっとキョロキョロしてしまって……どんな作業場なんだろうって妄想してたんですけど、結構解釈通りというか。
久保イメージ通りでよかったね(笑)。
LAM久保帯人先生がこういうところで仕事してほしいよなっていうのを体現しすぎてて、ちょっとフィクション感があるぐらい、かっこよすぎるなって。入り口のスリッパも「履いていいんですか」って言って、一護色(オレンジ)にして。音楽や映画やファッションがお好きなんだろうなっていうパブリックイメージが子供の頃からずっとあって、もう浴びに浴びてるって感じです。
久保来てちょっとの間に?(笑)
LAM普段イラストレーターをやっているんですけど、「創作の原点は何ですか」って聞かれたら真っ先に『BLEACH』が浮かぶので、本当に光栄です。
久保イラストレーターなのに滔々と喋れてすごいな。
LAM僕、滔々と喋れる方なんですよ(笑)。緊張してますけど、だいぶマシになってきました。
僕が『BLEACH』と出会ったのは、小学生の頃にサッカースクールの先生に「週刊少年ジャンプ」(以下、ジャンプ)を読ませてもらったのがきっかけで。
久保へぇ。
LAMその頃がちょうど(久保先生の初連載作品の)『ZOMBIEPOWDER.』の終盤ぐらいで、かっこいいと思って読んでいて。そこからしばらくして「赤マルジャンプ」の読み切りの『BLEACH』を読んで、めっちゃ面白いと思って。連載来い、連載来いって子供の頃思ってたら、そんなに期間を開けずに『BLEACH』が連載を始めて。むしろ『BLEACH』が始まったからジャンプを毎週買うようになったっていう感じで。
1話の頃からずっと小学生の時から中学校、高校と読んでいて。今思えばかなり熱を帯びていて、中学生の時に毎週日曜日、友達と近くのホームセンターに行って木の板を買うんですよ。それぞれが全然喋らずに黙々とノコギリで刀を作って。「今日俺、斬月」とか言って――
久保すげぇ。
LAM塗装して、夕方ぐらいにやっとできる。そしたらそれでボコボコに戦って壊れるんです、簡単な作りなんで。それを1年ぐらいやってました。斬魄刀をめっちゃ見ながら描いたりっていうのが当時のクリエイティブの原点ですね。あと中1、中2ぐらいの時にアニメが始まって。次のクールのオープニングは何が来るかなって予想したり、漫画の中でキャラクターソングが設定されてたじゃないですか。そういうのを友達と聴いて、「これ何々の曲だ」ってやったり。
久保嬉しい。聞いてくれてるんだ。
LAM読みますよ、ファンはああいうところ。やっぱ洋楽、僕も知らないようなアーティストさんのお名前ばかりだったので、本当に音楽がお好きなんだろうなって子供ながらに思ってました。……(久保先生の仕事場の)入り口の棚がちょっとやばいなと。
久保CDラックがね。
LAMあれ特注されたんですか?
久保特注で作ってもらったね。
LAMですよね。明らかに市販品の作りではないなと思って。ありえない量のCDで。ボン・ジョヴィとかがお好きなのかなって。
久保ボン・ジョヴィ好きだね。
LAM飾られてるのを見て。僕は洋楽そんなに詳しくないんですけど。
久保俺はボン・ジョヴィがちょうど中学生くらいの時に。
LAMじゃあ(ボン・ジョヴィを)浴びてってことですね。僕にとっての『BLEACH』はボン・ジョヴィみたいな存在です(笑)。
小中高とずっと『BLEACH』を読んでいて、キャラクターの模写とかしながら「いつか漫画家になるぞ」と思ってたら、気づいたらイラストレーターになっちゃった。やっぱり原点ですね。すごい絵を見ながら育ったし、描きながら育ったし、影響を受けてるなと自分でも思います。
久保漫画家になろうと一回は思ったってこと?
LAM思ってましたし、中学生、高校生の頃は漫画を描いてました。
久保あ、そうなんだ。
LAM友達とアナログで原稿用紙を買ってきて、「ジャンプのこのページを今日は模写しよう」って。コマ割りして2人で、下書き担当とペン入れ担当に分かれて、1枚の原稿を2人で1日で完成させるみたいな感じで模写してて。その時に一緒にやってた友人は今、漫画家になりました。
久保へー、すご。
LAM僕はイラストレーターになったんですけどね。高校の頃にお絵描きソフトが普及し始めて、自然とイラストの方にハマっていきました。
久保そっちの方が楽しかったってことかね。
LAMそうですね。でも漫画への憧れはずっとあって、描けるようになりたいなとは今でも思ってます。表紙のイラストもそうですけど、『BLEACH』は本当にもうめちゃくちゃ表紙がかっこいいので、真似したり模写したり、余白の使い方も含めてすごく影響を受けましたね。
鬼太郎の点描から、『聖闘士星矢』へ
担当(BLEACHメディア担当)久保先生はいつから絵をお描きになられてますか?
久保(絵を描いた)一番最初っていうと、みんなそうだろうけど幼稚園とかの頃に虫とか恐竜とかを描き始めたのが最初だね。
LAMチラシの裏とかに。
久保うち、実家が新聞屋だったから、バカデカい地図がいっぱいあって、地図の裏に描いてた。キャラクターってなると小学校入ってからかな。
LAM久保先生も漫画を読まれてて、やっぱりジャンプ作品が多くてっていう。
久保一番最初は『ゲゲゲの鬼太郎』の模写から入ってるんだけど。
LAMあ、水木先生の。へー!
久保そう、小3ぐらいまでは鬼太郎の模写をしてて、本当に影を点描で打つやつをやってて。小5、小6ぐらいでジャンプを買い始めて。
LAM『聖闘士星矢』からですか?
久保そうそう、『聖闘士星矢』。すごいよく見てるね。
LAMインタビューでも読みましたけど、当時だと『聖闘士星矢』とか、僕のひと回り上の世代ですよね。
久保うん、一周上の。
LAMじゃあ10代の頃から漫画家になるぞっていう感じだったんですか?
久保小学校卒業する頃には漫画家になるぞって思って、卒業文集とかに将来の夢を書く時に漫画家って書いてると思うから。
LAM僕も漫画家って書いてたんですけどね。
久保まぁでもイラストレーターがいいんじゃない? こんなにうまかったら。
LAM恐縮です。上手いって言われちゃった。今、過去の自分に自慢しました。それこそ漫画家を目指されていたのが10代の頃からと伺って、実際まだお若いのに驚いていて。
久保いやいや 若くないよ!
LAMだってまだ40代……。
久保そうだね、48。
LAM僕35ですよ。
久保そっかそっか、一周り。
LAM13歳年上のお兄さんに支えられていた小学生時代だったって考えたら、当時の僕からしたらクリエイターさんなんて神様みたいなもので。実際にお会いしてみると、 “13歳しか変わらないのか”っていうびっくりもあるぐらいお若いなって。デビューが早かったからっていうのもあるんだろうなと。
久保でもジャンプ作家さんって結構みんな早い。
LAM確かに。
久保20代前半でみんなデビュー。
LAMなるほどな。僕が18歳ぐらいの時はまだ全然で、絵はずっと好きだったんですけど上手かったわけではなくて。
久保何かあれじゃないの? クラスで一番うまいみたいな感じじゃなかったんだ。
LAMまぁギリギリ(笑)。絵を描くキャラではあったんですけど。
久保じゃあ十分じゃない。
LAMやっぱり18歳ぐらいの時にSNSとかイラスト投稿サイトが出てきて、同年代でもすごく上手い人がたくさんいるのを見て。
久保絵上手い子いるよね。
LAMネットに触れることで世界が広がって、すごく打ちひしがれたんですよね。もっと上手くなりたいなっていうモチベーションはありつつも、18、19歳で漫画デビューしてる方もいたし、読み切りを投稿してる友達もいたので、くすぶってましたね。
久保あぁ、そうなんだ。
LAM変わらず漫画はずっと大好きだったんですけど、どこか漫画というものを自分の中で格を上げすぎちゃって。
久保自分にはできないんじゃないかって思っちゃうみたいな。
LAMそう、恐ろしい行為だなっていう風に当時なっていた気はしますけど。でもその中でもとりわけ『BLEACH』はずっと模写してましたね。
久保ありがとう。
表紙も書体も、自らの手で
担当この辺りの絵柄など、影響を受けているとのことですが…
LAMそうですね。悪い男がセクシーで好きなんですよね。
久保ああなるほど。
LAM目つきが悪かったり荒っぽかったり、細マッチョだったりマッシブだったり。そういうキャラクターが好きになった原点は久保先生の男性キャラクターです。女性キャラに傾倒してた時期もあったんですけど、やっぱり自分がフェチを入れやすいのは圧倒的に男性で。好きになる役者さんも男性俳優が多くて、そういうフェチズムはやっぱり『BLEACH』の男性キャラからエッセンスを浴びた影響があるなって思いますね。
LAM久保先生の前で自分の画集を開くのは緊張しますね。
久保ああ、俺もうこれもらって見たから。全部。これさ、装丁の話していい? めっちゃ良くなかった? 箱とか。
LAMありがとうございます。僕が『BLEACH』好きなのが分かりますよね、こういうの見たら。
久保そんなことを思いながら見てないけど(笑)。
LAM装丁は加藤(デザイナー)が頑張ってくれて。僕らも結構クリエイティブを作る時に「『BLEACH』のアレっぽく(インパクト書体みたいな太い書体)したいよね」っていう共通言語がすごく多かったので、今回の作りにもそういう影響はあるかもしれないですけど、褒めていただけて嬉しいです。
久保でもインパクト書体のこととか言われて嬉しい。俺もなんか単行本出るまでの段階って、初代の担当がついてジャンプに載せるんだけど、書体が俺が思ってるやつじゃないとかで担当と喧嘩になったりしてたから。
LAM当時は選択肢もそんなに多くなかったですよね。
久保そう。だから単行本でる時に自分で表紙デザインさせてくれって話をして。
LAMご自身でやってるんですか?
久保やってるやってる。パソコン使ってないんだけど、書体をこれにして、このバランスでここに置いて、この色にして、色はCMYKでこうとか。
LAM表紙の題字とかキャラクターの名前の墨っぽい筆の字もそうですし、書体、ロゴデザイン、ワーク全般もご自身でずっと連載中やられてたんですか。
久保そうだね、基本的には。当時は俺パソコン全く使えなかったから、絵で描いてデザイナーさんに渡して、この感じでやってって出してもらって、それでここをこう直してと。
LAM随所に使われるマークや漢字、ユーザーインターフェース的な漫画の背景に出てくる情報、作中のオブジェクトの数々に、久保先生のデザインセンスがすごく詰まってるなって。文字も描けてデザインもできてキャラクターデザインもできて、何もかもができるなっていう印象がずっと強くて。今日はそこも聞いてみたかったんです。キャラクターが一人ですごく立ってるなっていうのが本当に魅力だと思うんですけど、最初に思いつくのって何なんですか? キャラの造形なのか、名前なのか、能力とか記号なのか。
久保キャラによるかな。ルールなわけではない。名前のストックがめちゃくちゃあった。
LAM常に「こういう名前いいな」って思いついたらストックしてあって、あてがったりすることもあるんですか。
久保うん。で、この名前に合うキャラクターで出したりすることもあるし、キャラの絵が最初に浮かんで、これに合う名前って探すとなかったりするから、また考えたりとか。
LAMストックするような感じなんですね。
久保そうそう、名前はいっぱいストックしたんだけどね。
LAM『BLEACH』のキャラクターでいうと、例えば一護やルキア、読み切りの頃からいるキャラは造形からなんですか? 一護って名前もすごくインパクトがありつつ、作中でも大事なネーミングだと思うんですよね。僕、第1話の「Death and Strawberry」が世界で一番好きな表題なんです。
久保本当に?
LAMその時からストロベリーっていう英単語が大好きで。一番好きなのが、ストロベリーかムーンなんですよ。
久保え、『BLEACH』じゃん。
LAM字面がすごい好きで。
LAM一護はこのオレンジのツンツンが先だったんですか?
久保一護はそうだね、見た目が先だったね。一番最初の時はオレンジのツンツンじゃなかったな。ツンツン頭でたれ目ってとこだけ一緒で、メガネかけてて黒髪だったのよ。
LAMちょっと石田雨竜のエッセンスが分離したみたいな感じですね。
久保そうそう。ちょっとインテリヤクザみたいな見た目というか、今よりもっと目つきが悪くて。一護より先にルキアをデザインしていて。『BLEACH』を描こうと思ったのが最初じゃなくて、ルキアを最初にデザインして「死神のキャラクターだな」と思ったから『BLEACH』にして。ルキアを描いて「主人公じゃないな」と思ったから、主人公が要るなと思って描いたのが一護。最初に描いたのは黒髪で眼鏡だったんだけど、ルキアと対比させたいからこれじゃないなってなって、ルキアに合うように直していったのが今の一護。
頭のなかにキャラクターが常にいる
LAM後に明らかになる能力だったり、1話(の扉絵)に平子がいたりとか、後々いろんな展開が出てくる伏線が緻密に組み込まれている作品だなって思うんですけど、初期の段階から(伏線を)考えてたんですか。
久保キャラを出す時には結構バックボーンを作った状態ではあるね。
LAM藍染とかも、藍染って名前が日本語の藍染ではなくて――
久保鉄の、ドイツ語のね。(スタッフ注釈:「鉄の心を持つ男」としてドイツ語のEisenから)
LAMそれを関連させてたのも、藍染をこうしようっていう意図があったから事前にネーミングしてたんですか?
久保そうだね。最初藍染を作った時はどっちでもやれるように作ってて。鉄の意志を持つ男でそれにして。漫画に出す前にキャラクターを作る段階があって、作った段階ではどっちでもできるようにって。
LAMそれこそ週刊連載っていうすごいスパンの中で、次はルキア奪還篇だ、とかってなった時に、登場人物がバーッと増えるタイミングが来るじゃないですか。事前にスケッチとしてストックした状態で連載に臨んでいたのか、毎週考えていたのか。
久保頭の中にはいる状態。頭の中に常にキャラクターが何十人かいる状態で日頃生活してる。描いてない、紙に描き起こしてないだけ。
LAMんー! 今もですか? それが常なんですか。
久保そうだね。漫画家になろうってなっていた頃から、クオリティは違うけど常にそういう状態がちょっとあって。
LAMふとした時に「こういうキャラいいな」とか、映画見たりインスピレーションを受けた時に、ストックみたいな住人がどんどんアバターみたいに頭の中でウロウロし始めて増えてくる感じですか。
久保そうだね。不定形な状態で、ぼんやりいる状態。
LAMじゃあそれを出力するぞみたいな感じで原稿に?
久保俺、担当と打ち合わせをしないタイプの人間なんだけど、毎回担当に「来週はこういうの描きます」って言って、描くというのをずっと続けてて。尸魂界篇に入る、ルキアがさらわれたっていう話を描いた時に、「尸魂界に行くんですか?」って担当に聞かれて、「行くよ」って言って。「いっぱい敵描かなきゃいけないんですけど大丈夫ですか?」みたいな話になった時に、「来週までにざっと描いたやつを渡すから」って言って、担当が帰った後にパーッと描いて「これです」って渡して…見せたのかな。それでその状態で入ったというか。
『BLEACH』の連載が始まる時も毎回そうなんだけど、急に決まるんだよね。例によって俺が漫画を描かないから(笑)。連載会議って3話出すんだけど、1話~3話でネームを描いて出す。人によっては1話は完成原稿にしなきゃいけないとか、キャラクターの表を描いてって言われるんだけど、俺が描かないもんだから「1話だけ描け、ネーム描け」って言われて。
LAM3話はいいから1話だけ。
久保そうそう。1話だけ描いて渡したら通ったから「描き始めよう」って話になって。まだ3話はできてないのに。だから始まるってなった状態から3話まで描き始めてみたいな感じで。始まるぞって言われて、じゃあ一護のクラスメイトを作らなきゃってなって。メインどころはもちろんいるんだけど、他にも何人か出るかもしれないからクラス全員考えるぞってなって、38人ぐらいいるクラスメイトを2日で描いて。それを担当に全部見せて、「一回学校の話を描くから、この中のどれかの話を描きます」みたいな感じで描き始めて。
LAMはー。同級生たちもすごく魅力的で物語にも絡んでくるじゃないですか。能力を持っているかどうかに関わらず、遊子や夏梨もそうですし、人間のキャラクターたちの日常感にも魅力を感じるのは、先生の中にそういうアイデアの種みたいなものがたくさんあるからなんですね。
久保メインどころだと、チャドとか織姫とか雨竜とかはもちろんキャラクターとしてあったんだけど、それ以外の水色とか啓吾とかたつきとかは30何人からチョイスして。このキャラクターがあいそうだって。
LAM別の子だった可能性もある。
久保そうだね。
LAM伏線の話で気になったんですけど、ルキア奪還篇も破面篇も千年血戦篇も、先々の展開は最初にイメージがあったんですか?
久保流れはないっていうか、描くって決めてるシーンがいくつもあって、その間を繋いでいく、みたいな。こういう画面をやりたいみたいなのがまずあって、こういう画面にこういう台詞でこう言うのって。
LAM逆算したり繋げたりする作業でストーリーができていくんですね。僕が気になってたのが、一心がコンのことを一護って呼んでないって言うじゃないですか。一心が死神の姿で出てきた時に。「は、嘘つけ!」と思って、昔の単行本を読んだら確かに一護って呼んでない。あれって考えてたんですか?
久保あれは考えてた。出してないやつもいっぱいあって、散りばめているんだけど描いてないやつみたいな。だからどれを拾ってもいいように描いているというか。
LAMえっ、描いてくださいよ……。
久保(笑)。俺がそういうのが好きというか。漫画じゃなくて例えばゲームとかで、データの端っこにちょっとだけしか出てこない手紙みたいなワードで「もしかしてこういう話があったんじゃないか」とか想像するのがすごい好きで。そういう楽しみを自分の漫画の中にも入れたいなと思って、色々散りばめて。
『BLEACH』週刊連載のルーティーン
LAM週刊連載って、週刊で漫画を生み出し続けるお仕事じゃないですか。今週休んで来週2週分頑張ろうとかができない。週刊連載の中でのサイクルってどんな感じだったんですか。
久保俺は基本6日で原稿上げるタイプだったんだけど。
LAM1日は休みとしてバッファを取ると。
久保取らないと、その日にカラーの仕事が入れられるから。
LAMじゃあ原稿作業は6日。
久保原稿作業は6日。ネームっていう原稿前の段階を描くのに3日。で、初日に3ページ描いて、次の日に11ページまで描いて、3日目に残り最後まで描く。翌日からペン入れ。ペン入れが2日…一日半かな。初日に15ページペン入れして、翌日に4ページペン入れてるあたりでアシスタントが来て、夕方から入って。夜寝る用にベッドもあるんだけど、アシスタントあんま寝なくて、仕事して、翌日の昼の12時に上がるっていう感じで。
LAMへー! ネーム3日、ペン入れ1.5日、仕上げ1.5日、1日バッファってことですか。
久保そうそうそう。
LAMはあ…(感嘆)。すごいですね。カラーイラストはどれくらいかかるんですか。
久保カラーイラストは休みの日にやることもあるし、あんまり休みの日にやりたくないから原稿しながらやることが多い。
LAM表紙のイラストとかって当時コピックですよね。
久保うん、コピック。
LAM表紙1枚描くのってどれぐらいの時間なんですか?
久保あんまりね、それだけで数えたことない。
LAMじゃあもう合間に進めたりとか。
久保ネームのついでに下書きはやっちゃって。で、アシスタントが来てる間に自分の本編のペン入れは人が来るまでに終わって。カラーのペン入れは、アシスタントが来て背景とかやってくれてる間に、カラーのペン入れをして色を塗ってまでやるみたいな。
LAMえっ、でも…本当ですか?(笑) 『BLEACH』の表紙って人数がたくさんいたりするし、僕が当時からずっと気になっていたのがファッションなんです。各キャラクターが着てるファッションや身につけてる小物がすごくオシャレで。扉絵でキャラクターが決まったファッションで出てきたりするじゃないですか。描く時に何を着せようかとか、テーマはその時に決めるんですか?
久保その時に決める。
LAMじゃあ普段からこういう服着せたいなっていうストックがあって、割とノリで?
久保ノリでだね、カラーは本当に。描きたいイメージみたいなのは時々頭の隅に置いておくみたいな感じだけど。
LAM『BLEACH』の単行本を1巻から順繰りに買っていく中で、花太郎の表紙……14巻かな、薬瓶を落とすシーン。あれは最初に本屋さんで見かけてびっくりしたんですよ。いつもと違うって思って。その次がイヅルの15巻で。
久保ああ、15巻。
LAM影が入ったりとか、ちょっとずつ今までのトンマナが変わったような、あの表紙の転換にすごく興奮して。
久保ずっと静止画みたいにやってたのが。
LAMポートレートみたいな感じだったのに、急にイラストレーション的なものに。漫画というよりイラスト、グラビア的なもののセンスやエッセンスって、何で培われたんですか? それこそ僕は久保先生が漫画家さんであると同時に、類まれなるイラストレーターとしても尊敬していて。今の感じだとノリやバイブスで生み出されてるんだろうなと思いつつ、その根っこにあるものが気になっていて。
久保何だろう……。
LAM音楽のアルバムもたくさんお持ちでしょうから、ジャケットを見ていいなとか。
久保ジャケットとかはあるかも。
LAMパッケージの持つ力とか、浴びてきたエッセンスが引き出しにあったとか。映画とかもそうですけど。
久保映画あんまり詳しくないんだよね、実は。好きなやつもあったりするんだけど。だから映画とかよりもMVとかの方に影響を受けているかも。でも構図とかはどうなんだろ。
LAMだっておかしいですよ……そんなのすごいです。僕の中では「イラストレーション」としての文脈や積み重ねを感じてるんですよ。漫画家を目指してた頃から、表紙や扉絵でかっこいいなっていう積み重ねが……。
久保いや? 漫画からのイラストは多分ないかもしれない。『聖闘士星矢』は好きだけど、表紙がどうだったかもあんまり。
LAM実際テイストも違いますしね。また次お会いする時までに考えておいてもらってもいいですか(笑)。バックボーンがあるのかなと勝手に思ってたぐらい、本当に魅力的な表紙イラスト群なので。
久保ありがとう。
(後編に続く)
対談の音声を久保帯人ファンクラブ「Klub Outside」にて限定公開しております。
